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新潟家庭裁判所 昭和33年(家ロ)1号 命令 1958年3月31日

申立人 佐藤清子(仮名)

相手方 田村一郎(仮名)

主文

相手方は申立人に対し別紙調停条項第二項(ロ)の慰藉料金二万円を昭和三三年六月末日限り新潟家庭裁判所新発田支部に寄託して支払え。

理由

本件申立理由の要旨は相手方は昭和三二年五月二〇日新潟家庭裁判所新発田支部で成立した同庁昭和三二年(家イ)第一六号離婚調停事件において相手方は申立人に対し慰藉料として昭和三二年一二月末日限り金二万円を新潟家庭裁判所発田支部に寄託して支払うことの債務を負担したに拘らず相手方はこれを履行しないので相手方に対し履行命令を求めると言うのである。

よつて考えると当裁判所調査官の調査結果及び相手方の訊問の結果を綜合すれば上記事実及び相手方は○○県○○支庁○○課に勤務し本俸は二万二千円(暫定手当を含む)程度で共済組合互助会等に対する債務があり他に特段の財産なく家族は母妹三人(うち一人稼働)弟一人(工員)であつて生活は余裕がなく相手方が右の金を支払うことは容易でないことが窺われるが、昭和三三年六月中労働金庫より相当額の借り受けが為され得る見透しがあり夏季手当の収入も見込まれるのでこの点を考慮して前記金額について本命令を出すことにしたのであるが収入の少い点から履行が相当困難を伴うとしても義務を尽す心構えは持たなければならないし相手方において誠意を示さないときは後記の通り過料の審判を受けるばかりでなく引き続いて履行期の到来する本件調停条項第二項(ハ)の義務の負担が重なることを考えて履行に努力しなければならない。

以上諸般の事情を考慮して主文の通り審判する。

相手方は正当の理由がなくこの命令に従わないときは金五千円以下の過料に処せられることがある。

この命令は調停で定められた義務に何等の影響を及ぼすものではない。

(家事審判官 山内麹四郎)

(別紙)

調停条項

一、申立人と相手方とは本日調停離婚する。

二、申立人は相手方に対し慰藉料として金一五万円を次のとおり分割し新潟家庭裁判所新発田支部に寄託して支払うこと。

(イ) 昭和三二年六月末日限り金三万円

(ロ) 同年一二月末日限り金二万円

(ハ) 同三三年六月末日限り金二万円

(ニ) 同年一二月末日限り金二万円

(ホ) 同三四年六月末日限り金二万円

(へ) 同年一二月末日限り金二万円

(ト) 同三五年六月末日限り金一万円

(チ) 同年一二月末日限り金一万円

三、当事者双方は本件に関し以上の外互に財産上の請求はしないこと。

四、本件調停費用は各自弁のこと。

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